○オーダーメイド医療
米国のFDAでは、「personalized medicine」という言葉が使われています。直訳すると「個別化医療」ということになりますが、わかりやすいということで、シカゴ大学の中村祐輔先生が「オーダーメイド医療」としたということです。専門家だけでなく消費者である国民にもわかってもらうためということでオーダーメイド医療とされたようです。
オーダーメイド医療は、その名のとおり、遺伝子検査などから個々の生理的状態や疾患の状態などを考慮して最適な予防法や治療法を可能としていく医療のことで、自分の体にぴったりあった洋服のオーダーメイドに似ています。診断に基づき、同じ量の薬を投与するというのではなく、個人個人により薬との相性があり、強い副作用がでてしまう人もいます。
遺伝暗号の違いを明らかにすることによって、一歩ずつ進んできています。最終的には、患者にとって最も効果があり副作用が発現する可能性が最小となるように、薬の種類や投与量・投与方法を決定していきます。
特に、遺伝子診断などに基づく治療の個別化に関して使用されることが多く、年齢・性別・体重・腎機能などを考慮した薬物投与設計も広義ではオーダーメイド医療の手法の一つになります。
オーダーメイド医療が活用されている例 : 乳がん、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、B細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍

○テーラーメイド医療との違いは?
根本的には同じですが、テーラーメイドというと高級な服を金持ちが注文する形で、庶民的ではないイメージになってしまいます。またテーラーつまり売り手側が主役になってしまっていることから、意味合い的には同
じオーダーメイドとテーラーメイドですが、若干のニュアンス的なところから、オーダーメイドと呼ばれることが多くなっています。

○個別化医療とオーダーメイド医療の違いとは?
個別化医療は、FDAでも使われている personalized medicinal の直訳表現ですが、ホリスティック医療の代替医療関連の分野だと、意味合いが違ってきたりする場合があります。「これは患者ひとりひとり、すべて
治療を変えるという意味ではない。今よりもっと患者を細分化して、それぞれの層にあった治療をするということだ」というように注意書きがあったりする場合もありますが、若干違ったニュアンスの意味合いをもつ場

合があるということです。「カスタムメード医療」(Custom-made Medicine)も同様にほほ同意で使われます。

○コンパニオン診断薬
オーダーメイド医療では、個別に検査を行い、患者さんをグループ分けし、効果が高く副作用が少ないグループに対して薬を投与していくことになりますが、この薬を投与する前に行われる診断薬を使った検査に用いら
れる診断薬が、コンパニオン診断くすりです。コンパニオンなどで「ともなう」という意味があり、治療薬に伴うという意味合いがこめられています。つまり薬の効き方副作用のでかたにより、治療薬を使う前のグループ分けに用いられる診断薬です。

○PHC
Peersonalised Healthcare の略で、個別化医療つまりオーダーメイド医療と同じ意味で使われます。

○バイオテクノロジー(遺伝子工学)
遺伝子改変技術で、DNAを切ったりつないだり入れ替えたりして、生物の性質や正当をコントロールします。
発酵醸造産業や植物生産性向上に用いられますが、有効な遺伝子を大腸菌などの増殖力にすぐれた細胞に組み込むことで、その遺伝子のコピーを大量に短時間で生産できる技術が開発されました。
この技術により化学合成では作れなかった医薬品を微生物に作らせることができるようになりました。

バイオの応用としては、体の中で不足している成分を補充する医薬品 : インスリン(糖尿病)、赤血球増殖因子(腎性貧血)、白血球増殖因子(ガン)があります。

○バイオ医薬品
タンパク質などの複雑な構造をした医薬品は、遺伝子工学を応用した方法で微生物や動物細胞に作らせています。
エリスロポエチン(赤血球産生促進で、腎性貧血患者治療):ハムスターの細胞にエリスロポエチンを作る遺伝子を組み込む
インターフェロン(がん・C型肝炎に使用):大腸菌などにインターフェロンを作らせる遺伝子を組み込む

○ゲノム創薬
ゲノム創薬とは、かいどくされたヒトゲノム情報を、病気にピンポイントで効果を発揮する医薬品の開発につなげようとする分野の技術です。

○ゲノム
ゲノム(genome)は実は、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)の合成語で、DNAのすべての遺伝情報のことです。ゲノムは生物が生きていくために必要な遺伝情報の1組をいい、構造としては染色体の1セットに相当します。
遺伝とは、たとえば耳の形が似ている、ある病気にかかりやすいなどの、親の生物学的な特徴が子供に伝わることで、それを伝えるDNAの特定の部分が遺伝子です。
デオキシリボースという糖とリン酸がつながった一定の法則で4種類の塩基(アデニン・チミン・グアニン・シトシン)が並んで結合している鎖であるDNAは、二重らせん構造の鎖状に集合して染色体を細胞核の中で形成し、それが細胞分裂して増殖する際に、もとの細胞をコピーして新しいさいぼうをつくる遺伝情報になっていて、さまざまな蛋白質をつくる指示が組み込まれています。ヒトの身体は約60兆もの細胞で構成されていて、個々の細胞での遺伝子は、そこでどのような蛋白質を作るのか、どのような役割をする細胞になるのかを命令していきます。

○ポストゲノム
ヒトゲノム計画による成果を活用する研究で、その中心にゲノム創薬があり、cDNA解析・バイオインフォマティクス・プロテオーム解析という3つの方向性があります。
「cDNA解析」は、DNAそのものの遺伝子機能を解析する研究で、ゲノムの基礎的研究と言われています。cDNAは、遺伝子がつくった自分のコピーのことで、このコピーを使用して解析していきます。
「バイオインフォマティクス」は、生命情報科学で、アミノ酸配列・たんぱく質立体構造・DNA配列などが生命関連情報になります。これらをデータベース化し医薬品創薬につなげようという研究です。
「プロテオーム解析」は、ヒトが正常な時の細胞と病気にかかっている時の細胞プロテオームを解析比較して、病気に関連したたんぱく質を見つけていこうというものです。プロテオームはさいぼうの中のたんぱく質の総称です。

○SNP(スニップ)
SNPは、親から子へと遺伝的に継承されるもので、人によって異なることが発見されている一部のDNAの塩基配列の変異部分です。つまりSNPは個人の体質や特性の違いを決定し、個人や民族特有の病気にも関連しているものとされ、ゲノム創薬研究の重要な部分になっています。

○DNAチップ
塩基配列がわかっている1本鎖DNAをシリコンチップやガラス板上に整列されて固定したもので、ジーンチップとかDNAマイクロアレイと呼ばれることもあります。SNP解析に伴う遺伝子鑑定や病気に関連する遺伝子研究等に使用される研究しやすいように処理されたDNA標本といえるでしょう。

○HapMap(ハプロタイプマップ)と1000ゲノムプロジェクト
まったく同じDNAを持った人間は、一卵性双生児を除いてはいないとされています。そしてDNAの違いは遺伝番号のバリエーションと呼ばれています。この遺伝子番号の倍e-ションの組み合わせがハプロタイプでこれおマップ化したものが、HapMapです。
ヒトの遺伝子情報の解読は「国際ヒトゲノム計画」として米・日・英・仏・独・中の16の研究機関が参加して1990年にスタートし、ヒトの細胞閣内にある染色体に役30億対の塩基配列が存在することがわかり、病気に関連する遺伝子が新たに約100種類発見されています。そしてヒトのDNAは99.9%までが同じで、のこりの0.1%が異なっていることもこの研究によって明らかになりました。そしてこの異なる部分に、ヒトの病気に関する個人差や人間の多様性の秘密があるということが示唆され、ヒトゲノム計画の終了に続いて、HapMap(ハプロタイプマップ)のデータが発表され、疾病関連遺伝子のマップを作成していこうという国際共同研究「1000ゲノムプロジェクト」がスタートしています。

○抗体医薬品
抗体の働きを利用した医薬品
病気の原因となっている特定の抗原に結合する抗体を利用した医薬品で、特定の抗原(分子)を標的としているので、分子標的薬と呼ばれます。
さらに人の遺伝子を解析する技術が開発され、病気に関連する遺伝を特定し、その遺伝子情報を利用した分子標的薬が開発されるようになりました。
抗体医薬品等の分子標的薬とコンパニオン診断薬の組み合わせによるオーダーメイド医療

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