東洋医学の理論の一つに、『天人合一(てんじんごういつ)思想』というものがあります。「天」というのは自然・宇宙、「人」というのは文字通り人間のことです。つまり人と自然・宇宙を一つの統一体と考えて、人間の形や昨日も天地自然に対応するものという捉え方をしています。この「天人合一思想」は漢方の陰陽論や五行論により、さらに哲学的に解釈されて東洋医学の基礎となっています。
中国は日本と同様に長い間、農耕中心の生活を営んできたため、太陽や風雨などの自然や四季の移り変わりに関して深い関心が寄せられてきました。そして人と自然界の間には密接な関係があり、人間は自然環境の変化に大きく影響を受けているということが理解され、そこから人体の内部の仕組みを一つの小宇宙としてとらえた「天人合一しそう」が生まれました。
『天人合一』では、天と人間との関係をどうとらえるかという問題であり、中国思想史を貫く大きなテーマでもあるこのことについて、「天・人を対立するものとせず、本来は一体をなすものであるとする思想であり、その一体性の回復を目ざす修養・一体となった境地を「天人合一」としています。
人の心・性は天と通じあっていると考えていた孟子や、人には天が投影していると考えた董仲舒など、中国の宋代にこの考えが発達し、天人合一は宋学の重要な基礎観念ともなっているようです。
組織や器官は個々に違う機能をもちつつも、一方で有機的なつながりをもった統一体となっています。四季の移り変わりをはじめとした自然界の変化は、五臓六腑や気・血・水などにも影響を与えるとされています。

天と人の関係の例をあげると、次のようになります。
天に風雨あり、人に喜怒あり。
天に雷電あり、人に音声あり。
天に四時あり、人に四肢あり。
天に五音あり、人に五臓あり。

自然が統一体として有機的につながっているのと同じように、人間の体も五臓六腑四肢百骸(ししひゃくがい)五官九竅(ごかんきゅうきゅう)、皮、肉、筋、脈が経路系統等で結ばれ、統一体をなしています。
また、『三因制宜(さんいんせいぎ)』という漢方医学の極意とも言われる言葉もあります。
『三因制宜』とは、同じ病気、病態であっても、三因すなわち「時」、「地」、「人」の三つの要素、具体的には季節やその土地の環境、年齢、性別、体質などに応じて治療方法が異なると言うことを示しています。漢方には、いろいろな考え方があり言葉があるようです。

五臓六腑 : 五臓(肝・心・脾・肺・腎)
       六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)
       三焦(飲食物を消化吸収して気・血・津液を全身に配布)
四肢百骸 : 四肢は、手足の四肢。
       百骸は、人体全ての骨格。
五官九竅 : 五官は、目・舌・口・鼻・耳
       九竅は、眼2つ・耳2つ・鼻2つ・口・前陰・後陰

 カテゴリ

 タグ